『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』

佐藤優著。
国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

めちゃくちゃおもしろかった。
それに、あたまがいい人なんだな〜と思った。どういうところが頭がいいかというと、難しいことをわかりやすく書いているから。たとえ話なども素人にもわかりやすい。
鈴木宗男事件で、鈴木に先立って逮捕された外務官僚。浦校出身で、同志社の神学科を出たという変わった経歴の持ち主。
なんと言っても情報を専門としていた人だし、「国益のためにこれについては言えない」などと繰り返し出てくる割りには、こんな本を書くこと自体国益に反しているとしか思えない。
また、自分の正しさを露ほども疑わず書いている分、一般の人間との考え方の違いはかえって如実に現れているように思う。
たとえば、ロシアとの外交で、何についても鈴木宗男と相談している。一議員と外交がこれほど結びついていいものなのだろうか? たとえ不正が無くとも、ちょっと不思議だ。また、小泉政権が日本を、ケインズ型公平配分政策からハイエク型傾斜配分、新自由主義へと転換させている、という考察には深くうなずけるものの、この「公平配分」の例として、鈴木宗男などの、自分の(貧しい地域にある)地盤に利益を誘導すること、をあげられても、ちょっと賛同は出来ない。

まず、文句を先に書いたけれど、それはそれとしても非常に興味深いおもしろい本だった。
外交がどのように行われているか、というおもしろさもあるし、ロシア人の酒の飲み方やエリツィンの親愛の情の表し方など、雑学的にもおもしろかった。
サウナに出たり入ったりしながらウオッカを飲むらしい。そうすると汗をかくからいくらでも飲めるという。読んでるだけで血管切りそう。エリツィンの親愛の情の表し方は、3回のくちびるへのキスだという。3回目には軽く舌を入れるとか。ロシア人はあらゆる意味で濃い。もっと進んだ親愛の情の表し方もあるそうだが、それは書けないという。妄想がふくらみます。
この人が逮捕されるきっかけになった、イスラエルのロシア学者を日本に招待したり、反対に日本の学者をイスラエルに招待した事件。ソ連解体後、旧ソ連内のユダヤ人が出国できるようになり、彼らは続々とイスラエルに移住した。それで、現在イスラエル人口の20%がロシア系だという。それで、ロシアについてのかなりつっこんだ情報がイスラエル経由で手にはいるのだそうだ。こんなところも、意外でおもしろかった。

それから、東京拘置所のお正月三が日の食事はものすごく豪華。はっきり言って家のお正月より豪華かも。ステーキまで出るんだから。でも、おそらくは自室に閉じこもりっきりで、調書取りもないであろう三日間のごちそう責めは案外つらそうだと思ってしまった。

最後に国策捜査は最近どんどんハードルを下げてきているということ。ある意味これはいいことじゃない?とも思えるけれど、相手によってハードルが上がったり下がったりしたら、これはやっぱりおかしいよね。ライブドア事件などもここから連想された。(つまり東横インの社長が言っていた、「時速60キロの道を67キロで運転していて逮捕された」というようなこと)