「コリオレイナス」

彩の国さいたま芸術劇場にて。
複雑な話なので詳しくはhttp://www.saf.or.jp/p_calendar/geijyutu/2007/p0123.html]こちら。

結局大衆は「衆愚」なのか。そんなことを考えさせられた。
コリオレイナスマーシアス)の高慢にも、もちろん不快感を覚えた。
民衆に対し「要求するだけで、何もしない」と言うが、彼だって戦争をするだけで何も生み出しはしない。もし、今の政治家やら経営者やらがそんなことを思っているとしたら、到底許すことはできない。
しかし、自分の意見をもてず、護民官や貴族たちの言うままに右往左往し、自分たちの行く末も見通せない、自分たちの言動の責任も持てない民衆もまた醜い。
そして、その民衆はお前ら自身なのだと、舞台上の鏡に観客を映すことで蜷川氏は私たちに突きつける。
佐藤優氏の本に出てきた「日本人の実質的な識字率は5%だ」という言葉も思い出す。
私たちは衆愚でしかないのか?

というのはさておき、とてもおもしろかった。
コリオレイナスの高潔さ、鼻持ちならなさ、視野の狭さ。オーフィディアスの小ずるさと純情、母ヴォラムニアの猛母ぶり。
古典演劇ならではのくっきりした人物像。そして、共和制の始まり、という時代背景。
舞台の上の人物とともに、笑い、涙し、考えさせられる。
唐沢寿明は、ちょっと声がかれていて聞きづらいところもあったが、武道にのみ優れた、単純な男をカラリと演じていた。
オーフィディアスの勝村政信は、声もすばらしかったし、主役を食う演技をしていた。細かいところだけれど、1幕2幕とも、彼のシーンで終わるのは、舞台を引き締める意味でもよかったと思う。すっかりファンになってしまった。(彼はサッカー部ではなくて野球部だったの? 浦和北高校野球部から花が来てた)
言わずもがなの白石加代子。連れが彼女を知らなかったので「とにかくすごいんだよ〜 妖怪みたいだよ」と言ってあった。「確かに妖怪みたいだ」との感想。もちろん褒めてるんですよ。もう人間レベルではない演技ですよね。

何より印象に残ったのは、瀕死のコリオレイナスがひたすら振り続ける剣だった。彼は剣を振るうことで道を開いてきた。そして、最後までそれしかできなかったのだ。