『コレデオシマイ』

コレデオシマイ。
角川春樹事務所の編集者が山田風太郎にインタビューした聞き書き
たまたま図書館から借りてきていて、読み終わったばかりだった。
「角川と言えば、いい辞書を出しているね」
「角川は角川でも、うちは角川春樹事務所です」
なんていうやりとりが、妙におかしい。
旧制中学で山田は、友人たちと「風」「雨」「霧」「雷」などというあだ名を付け合っていた。風太郎というペンネームはこれが由来。しかし、他の雨さん、霧さん、雷さんはみな戦死してしまったという。テレビの方でも再三出た「自分は傍観者だ」という言葉、こちらでは、やはり学生時代の体験を絡めて語られている。
体が弱かった彼は、体育の時間になると何もしないうちから「山田は列外!」と言われてはずされたという。そして、常に自分は「列外だ」という気持ちを持っていると言う。
それから、江戸川乱歩はすごく面倒見が良かったという話。
山田がたまたま他と離れたところにいるのを捕まえて「君には才能がある」と言った。しかし、乱歩が死んでみると、その追悼文には、みんな彼にそうやって励まされたことが書いてあった。
また、「宝石」という雑誌がうまくいかなくなると、乱歩は自ら編集に当たり、原稿依頼までしていた。山田が応じないと「私が頼んでまだ書いてくれていない人は君だけです」というようなハガキが来る。その後も催促があり、ようやく山田が作品を出すと、またすかさずお礼のハガキが来る。その時乱歩63歳、山田35歳。

タイトルの「コレデオシマイ」とは、勝海舟の臨終の言葉だという。