『イラクの戦場で学んだこと』

岸谷美穂著
イラクの戦場で学んだこと (岩波ジュニア新書)

著者は国際基督教大学を卒業後、NGOで働きたいと思っていた。しかし、NGOは、大学卒をほとんど取らず、修士の資格が必要。それで大学院入試のための論文を書いてみようとするが、具体的な像を自分の中で持っていなかったのでいいものが書けない。じゃあ、やっぱり先に体験してみよう。
そんなちょっとおもしろい成り行きでNGOの世界に入ったのだ。
そして、イラク北部クルド人自治区で唯一人の日本人現場費責任者として3年を過ごす。写真を見ると、日本人の目から見ても非常に若く見え、また実際にも若い女性がイスラムの国でリーダーシップを取っていくのは非常に大変だったと思う。
きれい事ではすまされない現地の事情。有能な人は送り返されてしまい、金目当てのものばかりが残る国連職員たち。
国際社会→イラクイラククルド人自治区、という2重の経済封鎖。
東欧など他地域で紛争が起きれば、予算はすぐ減らされる。
こういう日本人がいることを非常の誇りに思う。
それと同時に、化学兵器の影響で生まれた奇形児の写真を見ると、人が人に対してここまでひどいことが出来るのだと、暗い気持ちで思い知らされる。