『ファストフードが世界を食いつくす』

エリック・シュローサー著
ファストフードが世界を食いつくす

最初は、ある種のサクセスストーリーから始まる。マクドナルドなどのの創始者たちだ。ハンバーガーを作るのに、工場のラインの方式を取り入れたのだ。つまり、一人は一つの工程しかこなさない。これで、ファストフード店に熟練者はいらなくなり、ティーンエイジャー、移民などの非熟練者だけを雇えるようになる。時給も安く社会保障も必要ない。
この方式は、やがて食肉処理にも取り入れられるようになる。ラインに乗って次々と運ばれてくる牛に、作業員は1カ所だけナイフを入れる。ラインのまわる速度は速くなる一方で、それに伴い事故も頻発する。会社は、ただ彼らをクビにすればいい。多くの場合補償はされず、されたとしても数千ドルという安さで、痛くもかゆくもない。
また、牛を育てる農家、古き良きカウボーイたちにも変化は訪れている。ファストフード業界と提携した大規模牧場のみが生き残り、小規模な牧場は廃業に追い込まれる。ファストフード業界が提示する金額も、到底もうけのでないものだ。
もっとひどいのは、養鶏だ。養鶏業者は加工業者から鶏を委託される形を取らされる。つまり、もし鶏に何かあったりすると、養鶏業者は多額の負債を追うことになるのだ。特に、最初に養鶏をはじめる段階では、まだ1セントの利益も出ていないうちから、養鶏業者は借金をおう形になっている。
アメリカの土台をになってきた産業を破壊しているのだ。
他にも身の毛もよだつような不潔な現場。検査官を立ち入らせたくない業者たちと、献金を受けそれを支持する政治家たち。
卵を例に取ると、アメリカでは毎年50万人以上がサルモネラ菌汚染卵によって食中毒にかかり、300人以上が死亡しているという。
世界一の先進国アメリカで、だ。

今、日本(の政治家)が目指しているアメリカは、こういうアメリカなのだと思った。
産業と政治家が国民を食い物にする国。