『統帥権と帝国陸海軍の時代』

秦郁彦
統帥権と帝国陸海軍の時代 (平凡社新書)

統帥権:軍隊を指揮、命令する権利。
だからなに?という気がするけれど、問題は「統帥権の独立」なんだろう。
つまり、海軍大臣陸軍大臣に現役軍人(だけ)がなるようになって、歯止めがなくなってしまったということか?
よく聞く「参謀本部」というのにも問題があったらしい。
参謀とは、作戦、情報、兵站(補給)の3本柱が必要なのに、作戦ばかりが重んじられ、情報と兵站を軽んじ、そこからほころびはじめたとも言える。

司馬遼太郎が衝撃を受けたという「統帥参考書」には
統帥権の本質は力にして、其作用は超法規的なり」など
無法の宣言、議会無視、無責任の宣言、独裁権の宣言が明文化されている。
こんなのを先頭に、日本は突っ走ってしまったんだなあ。

中国戦線がうまくいかないからと、南進したり、アメリカとの戦争に入っていったり、それは無茶としか言いようがない。というか、南方に進出した時点で、すでに日中戦争が行き詰まっていたとは知らなかったよ。少なくともその時点ではうまくいっていたから調子に乗ったのかと思っていたのに。
軍部が全然情報をくれないから、天皇アメリカの短波放送で戦況を知っていたとか、特攻攻撃を考え出した大西軍令部次長が「天皇特攻機に乗せての徹底抗戦」を唱えたとか、めちゃくちゃな話ばかりだ。
よく日本は滅びなかったものだ。

この惨状は決して忘れてはならないと思う。
忘れないでくれよ、指導者諸君。