『チョコレート・コスモス』

恩田陸
チョコレートコスモス

恩田陸が描く「ガラスの仮面」へのオマージュ。
という訳で、読み始めた時から誰がマヤで誰が亜弓さんかは一目瞭然。
伝説のプロデューサーが久しぶりに舞台を手がけることになり、それは女優二人の芝居になるらしい。そのオーディションはひそかに始まっていて……
となれば、ゴールは読み始めたときから見えている。後は、そこへどのように連れて行ってもらえるか。
そこここで、「ガラスの仮面」がよみがえる。‘手’ひとつで観客に恐怖を感じさせるところとか。(正確にはこれは月影先生がやったことだけど)
すごくおもしろかったけれど、「ガラスの仮面」と比べるとどうしても小粒感がぬぐえない。それはある程度荒唐無稽でもいい(昔の)少女マンガとの違いなのか?
マヤに当たる飛鳥がすごいわけも、ある程度合理的に説明されてしまっている。もちろん紫のバラの人はいないし、「紅天女」に対して、「あまりにこだわりが過ぎて映画しか取らなくなった伝説のプロデューサー」というのでは、やはりスケールが小さい。

それにしても「ガラスの仮面」は本当にすごい作品で、初めの頃の縦ロールのお嬢様に苦難にサラされる貧乏な少女、という大昔風の展開から、後の方ではレディコミまがいの(若き日の)月影先生のベッドシーンまである。この1作に日本の少女マンガの歴史が凝縮されている。
後半に行くにつれ、マヤの天才ぶりに対し、恵まれたサラブレッドと見えた亜弓さんの苦悩がクローズアップしてきているのも作品の深化をうかがわせる……
と、結論はやっぱり「ガラスの仮面」はすごい、と言うことなのでした。
(「ガラスの仮面」は読者が生きているうちに終わるのだろうか? 連載ではあった亜弓さんの失明がコミックスでは無くなっているけど、一体、これからどのように展開するのか? と、友達から借りて読んでいるだけでも、これだけ語れるのでした)