『東寺の謎』

三浦俊良
東寺の謎―巨大伽藍に秘められた空海の意図 (祥伝社黄金文庫)
タイトルは怪しいけれど、東寺の塔頭の住職さんが、東寺の成り立ちやら、空海の人生、ご自分の人生について語った本。
この間旅行で東寺に行ったので借りてみました。
印象に残ったのは不動明王などの明王について。憤怒の形相でとても怖いが、身につけているのは如来と同じもの。四天王などと違って武装はしていない。それは、明王が敵と戦っているのではなく、必死に人を救おうとしているからだ。荒れた海でおぼれている子供を救おうとしている母の形相と言ってもいいという。
自分の守り本尊が不動明王なので、この仏様は気になる存在なのだ。

それから、ご自分の人生の部分、終戦の前日、動員されていた造兵所から無人の東寺に一時的に戻ってきた夜、四万坪の敷地、三千坪の建物の中に自分一人という夜、寝ていると胸が押さえられて苦しい。どうしたのだろうと、胸のあたりをなでてみると何かが胸に乗っている。
ここまで読んで「幽霊とかお婆さんとか言うのか!?」と思っていると、なんと、狸が胸の上に乗って寝ていたというのだ。拍子抜けして笑ってしまった。
また、終戦後、夜懐中電灯をもって見回りをしていると、何もなかったはずの広場に植木がある。つつじの木がここにもあそこにもある。不思議に思ってよく見てみると、それもまた、狸であったと言う。狸がじっとしているのがつつじの木に見えたのだ。

狸が化かす、というのはここから来たのかも知れないなあ、とこれは読んでいての自分の感想。