NHKドキュメンタリー「21歳になりましたアメリカ編・イギリス編」

正確に言うと、イギリス編は先行して始まっているので「49歳になりました」です。
続けてみたせいか、アメリカ編・イギリス編はちょっと印象がだぶっている上に、日本、ソ連編ほどのインパクトは受けなかった。
ひとつは、彼らがみな「住宅地の子どもたち」であること。また、多くは賃金労働者(か失業者)の子どもたちであった。旧ソ連編のような、地域(ボルガ川からシベリアまで)や民族(ユダヤ人)のバラエティーや、日本のような地域(東北から沖縄まで)や職業(農業、渡し船の船長、歌舞伎役者)のバラエティ、はない。そこがちょっと物足りなかった。日本編の場合、(これまでのところ)さほど階層というものがないので、その分、地域や職業で違いを出したのだろうけど。

アメリカ編で印象に残ったのは、なんと言っても「エリック」君。7歳の時からエリート学校にいて、14歳で自分の会社を経営、21歳の今は、医学と経営を両立させるべく、医師として仕事をしつつ、診断技術を売る会社を立ち上げようと奔走している。
子供の時から「鼻持ちならない、いけ好かない奴」だけど、自分でもそういう目を自覚していてい「自分の暮らしがつまらないとか、寂しいとかは思わない」とわざわざ言う。彼には彼なりの気持ちがあるんだろうな、と思いつつ「いけ好かない奴」だと思ってしまう。
あと印象にのこったのは、同じ低所得者用住宅に育ちながらも、生き方が分かれてきたシカゴの少年と少女。少女の家は、14歳の時には政府の補助が出るいくらかマシな家に移っていて、21歳の時には、母と義父は持ち家におり、自分は未婚の母となりつつも、テキサスに移り大学院に入っている。
少年の方はずっと低所得者住宅に住んでいて、14歳の時にはラップ歌手としてデビューの話がありながら、21歳では殺人者として刑務所に入っている。(彼は無実だと言っているようだが)

それから、7歳時にはエリックといっしょにインタビューを受けていた少年も印象に残っている。エリックが「自分の好きなことをして成功したい」という横で「What!? そんな願いがあるか」とつぶやいている。彼はたしか「みんなで幸せに暮らしたい」というようなことを言っていたのだと思う。その彼は、実は多動性障害児で、母親の過保護を受けていたけれど、21歳ではついに母親と離れて暮らし、スポーツに勉強にと大学生活を楽しんでいた。


イギリス編はなんと言っても42年間の積み重ねが興味深い。最初なんか白黒映像だ。それに彼らだけは7歳の時に一堂に会して遊んでいるらしい。
7歳、14歳と自分をもてあまし、21歳の時はスコットランドを放浪中、自分の未来は「ロンドンのホームレスかな」と言っていた青年は、やがて政界に進出、42歳ではロンドンの政治家、現在は地方の評議員をやっている。彼だけは独身だったけれど、残りの人たちは(一人をのぞいて)最初の結婚を全うしている。離婚した一人も、再婚後の奥さんと、実子の他に里子をそだてたりして安定した生活をしている。そう言う人たちだけが、継続して取材を受けているのかも知れないし、7年ごとの取材があるしゅの自己規制として働いているのかも知れないが、全員ある程度幸せな、安定した生活をしている。
印象的だったのは、一貫して(7歳、14歳、28歳……)穏やかな家庭生活の中にいる穏やかな女性、と思える人が、21歳の時だけ、きつい顔をして斜めに構え、ひっきりなしにたばこを吹かしていたこと。どんな人にも、いろいろな時期があるのだと実感ができる。
それから、家庭生活は順調な女性だったが、ずっとつとめてきた図書館が経費削減のために、(おそらく)専門職を首にして、障害児たちに対するサービス(週1度バスで連れてきて読み聞かせなどを行う)をやめるらしい。いずこも世知辛い。福祉が手厚そうなイギリスでねえ。。。
この取材を最後にしたい、と言う人も多かった。7年ごとに過去を振り返らされるのはつらいことだという。それでもわたしは彼らの7年後を見たいと思う。

日本編、旧ソ連編、アメリカ編、イギリス編と見てきて、強く印象に残ったのは、
山形のお米農家の男の子、バイカル湖のほとりの女の子、アメリカのエリック君(なぜか彼だけ名前ごとインプットされた)でした。

旧ソ連編は、7歳、14歳とノーカットで見たいなあ。スキップシティに行けばあるかなあ?)