『わたしを離さないで』

わたしを離さないで

わたしを離さないで

静かな、本当に静かな物語だった。巻末の柴田元幸の解説にあるように「入念に構成された」「細部まで抑制された」作品。
そして、読後には胸の奥にずっしりと重いものが残る。
以下ちょっと他作品とともにネタバレ
清水玲子の「輝夜姫」がすぐに連想された。それで、主人公たちはVIPのスペアとして育てられているのかと思った。芸術が奨励されているのもその意味かと。そうではなくて、本当に純粋に「臓器」として育てられてるのね。免疫的な問題はもうクリアされている、ってどこかに書いてあったのかなあ? 見落としました。その点、SFとしての作りは「輝夜姫」の方が上かも。(SFとして書かれたものではない、というのは分かってるんだけど)
それから、主人公たちが育った施設ヘールシャムがすごく特別だ、となっている割りには、その後小屋などで出会う他施設育ちの人たちとの差がなかったと思う。他の施設が劣悪なら、知的、情緒的、社会的レベルが同じにはなれないんじゃないのかなあ?
すごく感動したんだけど、意外に後から疑問点がいろいろ出てきてしまった。
こういう設定を作らせるなら日本の漫画家とかライトノベルの書き手の方が上手なのかも知れない、と思いました。