『プラハの憂鬱』

*1193661776


1976年から1年間、当時の東欧をまわった記録。
そのころは、各国はいまだ共産国だった。

わたしは、両親が若い頃労働運動にかなり熱心だった影響もあり、どうしても共産国を悪く思い切れないところがある。しかし、こんな本を読むと、やっぱり共産主義というのは人間の自然に反しているのかなと思わざるを得ない。
日常生活の隅々にまで及んだ贈賄(というか鼻薬をかがせないと役人や医者、弁護士は動かない)。普通のアルバイトのできない国で、公然と行われている売春。その日のノルマ100本を売り終わったら、もう、目の前に山と積まれているコーラはもう売ってあげない、という売り子。一瞬も気が抜けない監視と密告。

とはいえ、そう言う実態は「やっぱりね……」とため息とともに受け入れるほかない程、何となく聞いたことがある事柄だ。

この本を読んで一番驚いたのが、当時「ユーゴは自由圏だと思われていた」ということ。西欧の品物も並んだスーパーマーケット、サービスのよいツーリストオフィス、強制換金制度がないこと、外資系の会社があること、自由に会話ができること……
それもユーゴの中でも、「進んでいた」、と言われるスロベニアクロアチアではない、現在のセルビアベオグラードでのことだ。(まあ、首都なんだから豊かなのかも知れないけど)
この豊かで自由なユーゴが、なぜ泥沼の内戦に突入してしまったのか。考えれば考えるほど切なくなる。