『ルポ貧困大国アメリカ』
- 作者: 堤未果
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/01/22
- メディア: 新書
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貧困児童率は2000年から2005年の間に11%上昇した。その一方で保育援助基金は凍結される。一事が万事その調子だ。
貧しい家では「フードスタンプ」に食事を頼る。すると安くて腹がふくれるジャンクフードばかり食べることになる。
ハリケーンカトリーナの時、連邦緊急事態管理局は予算を削られ組織を変えられ、殆ど何の役にも立たなかった。そして、災害後、被災地は経済競争地区とされ、アパート借りる替わりにそこに家を建てる権利をくじ引きすることになった。職も交通費もない被災者に家を建てる費用などない。結局、そこには高級コンドミニアムが建つことになる。
(『アフリカ〜』では、「社会主義政権だから、政府が勝手に民の土地を接収することができる」とある。しかし、アメリカでもやりようによっては、ご覧の通りだ)
それから映画「シッコ」でも見たように、病気がそのまま貧困につながる医療制度。
30年間で4倍になった大学の学費。私立なら年間260万円だ。その学費のためにローンを抱える学生たち。卒業後就職してもなかなか返済できない。最後の手段は「入隊」だ。学費を払って上げるから、とあまり言葉で勧誘するが、実際には半額ほどしか支給されず、新兵給料は1万5550ドルと貧困ラインぎりぎりであり、そこから、生命保険料、軍服代、学費の前金などが天引きされる。ほとんど女郎屋の世界だ。
また、最近は戦争も「民営化」され、様々な民間会社が傭兵をイラクなどに派遣している。彼らは、非道な行為をしても「軍法会議」などにかけられることはない。
結局、国の体制にもまして大切なことは、為政者が国民のことを本当に思いやること、その一点なのではないかと思う。そして、ある程度の能力をもって政治を行うこと、だ。