『対論・異色昭和史』
- 作者: 鶴見俊輔上坂冬子
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2009/04/15
- メディア: 新書
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世には、「右」とか「左」なんていう言い方があって、ご本人はたぶん、違う、とおっしゃると思うけれど、鶴見俊輔氏は「左寄り」、上坂冬子氏は、おそらくは自他共に認める「右寄り」の人。
私は、自分でも「左寄り」と認めている立場なんですが、この本の上坂氏のなんと魅力的なことか。だだっ子のような鶴見氏をある時はなだめ、ある時はたしなめ、ちょっと逃げたな、と思われるときにはちゃんと後で追及する。
もちろん、その考え方に全面的に賛成、とはいかないんだけど、なんて「大人」なんだと思った。
対する鶴見氏は、子どもの時に直感的につかんだことを、ずっと大切にしている人だと思った。どちらの方も魅力的。
それから、上坂氏が、「思想の科学」誌への投稿から、世に出たことを初めて知った。これもどちらかと言えば、左と思われている雑誌よね?
つまりは、「右」だの「左」だのの分類にとらわれて、なにより自分自身がとらわれて、ものの見方が固定化してはならない、ということなんだと思う。
色々おもしろい話があったけれど、幣原喜重郎の話が全く知らなかっただけに印象に残った。彼は、捨て子で、小学校を出たときに、非常に優秀だったためにそのままその学校の校長先生になった。校長先生は、放課後、することがないからいつも釣りをしていたという。それを見た村人が、こんな優秀な人に釣りなんかさせいてはいけない、と、お金を出し合って彼を上の学校に進ませたんだという。
また、引退後の幣原喜重郎に鶴見氏が会いに行ったとき、彼は奥さんと二人だけで、使用人もなく暮らしていたという。
こういう人が、そして、こういう人を支える人たちがいたんだなあ。
上坂氏の本も読んでみたくなった。