「真田風雲録」

彩の国さいたま芸術劇場にて。 蜷川幸雄演出。

公式HPより、あらすじ

慶長5年(1600年)、徳川家康の主導権を決定付けた〈天下分け目の戦い〉直後の関ヶ原で、敗軍の若武者と浮浪児たちが出会う。離れ猿の佐助やむささびのお霧、ずく入の清次――彼らこそ、のちの真田十勇士だ。
慶長8年に江戸幕府を開府した家康は、息子・秀忠を二代目将軍とし、世襲による安定政権を確立しつつあった。しかし、亡き豊臣秀吉の息子・秀頼だけは、なおも徳川による支配の埒外にあった。
そして慶長19年。〈大仏鐘銘事件〉を機に、徳川対豊臣の〈大坂冬の陣〉が勃発。豊臣方は、くすぶっていた全国の浪人たちを召集した。九度山に蟄居していた智将・真田幸村と彼を慕う十勇士も、活躍の場を求めて豊臣方に加わるが、豊臣の存続を第一とする上層部の判断によりやがて和議が結ばれる。
しかし、豊臣の力を大きくそいだその和議はほどなく破れ、〈大坂夏の陣〉が開戦。真田隊も自分らしい生き方を貫くため、最後の戦いへと突入していく――。


「真田風雲録」は、北村薫宮部みゆきのアンソロジー「謎のギャラリー 愛の部屋」で読んだことがあった。その時は、「時代劇なのに急に歌が出てくるし、どたばたのシーンもあるし、NHKの人形劇みたいな感じかなあ。それにしても小難しい台詞もあるし、安保時代の空気がでてるとも言うし、全然舞台が想像できない。見てみたいけど、もう上演されることはないんじゃないかな」と思った。
それが、彩の国でやるなんて!

さいたまNEXTシアターという劇団の旗揚げ公演。みんなオーディションで選ばれたばかりの若者たち。演技力の差は、ゲストのベテランたちと比べると一目瞭然なんだけど、何よりも若さ、ひたむきさ、「これから何かになってやる」という気迫が、このお芝居にあっていた。
初演の時は、関ヶ原のころの浮浪人たちと、安保闘争の若者たちが重なったのだろうけど、今回は、その上にもう一つ、役者の道に進み始めた若者たちのエネルギーが重なった。もしこのメンバーで再演されたとしても、そして、彼らがもっとうまくなったとしても、もう同じ芝居には2度とならない、そんな気がする。
それにしても、安保時代の若者たちは、本当にあんな難しい話し方をしていたのか? その時代を知る人によると、どうもそうらしいんだけど、今となっては、小説、ドラマなどでおなじみの戦国時代よりも、安保闘争の時代が遠く感じられる。

いいと思ったキャラクターは、千姫。これでいかにもお姫様な美女だったら、本当にいやな女だけど、あのぽっちゃり体型と明るさで、真心もあるがたくましい、そういう女性になった。結果的に彼女は助けられたけれど、もし、あのまま大坂城で死ぬことになったとしても、明るく笑って死んでいったのではないか、と思える。

ずく入の子ども時代をやった女性、カーテンコールで探したけれど、見つからなかった。きっと、ちゃんと女性に戻っていたのだと思う。すごいなあ。

客席には、年配の男女の姿が多く、出演者の親御さんたちもいたのだと思うけど、多くはそれよりも上の年代。もしかしたら、安保闘争や「真田風雲録」が書かれた時代に思い入れがある方たちなのかな。

本当にいいお芝居だった。