『リヴァトン館』

リヴァトン館

リヴァトン館

ゆったりとした語り口、たっぷりとしたボリューム。読書の楽しさを堪能した。
あらかじめ「ゴシックサスペンスではない」と他ブログで読んでいたので、なぞめいた部分に興味をひかれすぎないように気をつけていた。
確かに、いろいろとある隠された部分は、遅くとも作品で明かされる直前にはわかってしまう。だけれども、そのことがある種の不思議な効果を上げていたと思う。それは、「謎」がほとんどは悲劇に関わることなので、どんどんと心の中にわき上がってくる黒い雲を見ながら読み進めるそんな感じだったからかもしれない。あるいは、すでに結果がわかっている歴史小説を、破滅を待ちながら読んでいるとき、たとえば、マリー・アントワネットの生涯や平家の滅亡を扱った小説を読んでいるときのような、そんな不思議な読書感だった。
著者の後書きで、『昏い目の暗殺者』や『日の残り』、それからイギリスのテレビドラマ「Upstairs Downstairs」などに触れられているけれど、読みながら私もそれらの作品を連想していた。それから、映画「つぐない」の原作『贖罪』、あとはマンガの「エマ」も。
二作目は東京創元社から出るそう。楽しみだ。