「ヘンリー6世」

彩の国さいたま芸術劇場シェイクスピアシリーズ。
全3部作(約9時間のもの)を2部、4幕(約7時間)に再構成してある。

見に行く前は、「大丈夫かなあ。辛くなるかも」と思っていた。しかし、ちょっと眠くなったのは1幕の後半だけで、後は舞台に引き込まれていた。

第1幕は、イギリスとフランスの間の百年戦争大竹しのぶジャンヌ・ダルクになって登場する。シェイクスピアはイギリスの人だから、このお芝居のジャンヌ像にはやっぱりちょっと悪意があるのかな? 粗野でエキセントリックな田舎娘。だけど、かえって、これが真のジャンヌかもと思えた。たぶん「聖少女」的な像よりも、こちらの方が実際に真実に近いんじゃないのかな。
そして、後半はイギリスの内戦、ヨーク家とランカスター家のバラ戦争。
まさに、報復合戦、血で血を洗う負の連鎖。
戦争ばかりしていたのだな、この時代は。
その中で一人「清い」ヘンリー6世。
最初に子役で登場するのというアイディアがやっぱりすごいと思う。
彼の無力さ、清さ、中空性がよくわかった。
后の猛女マーガレットは、これまた大竹しのぶヨーク公とのからみはすさまじいの一言。
終盤は、後に「リチャード3世」になるグロースター公リチャードが大活躍。デビュー作「ヘンリー6世」から「リチャード3世」を書くまでにどれほどの時間が経っているのかはわからないけれど、この時からすでにシェイクスピアはリチャードに関心があったのだとわかる。
よその国の争いのなのに、外国の、何百年後の人間をも引きつける、やっぱりシェイクスピアはすごい。