「借りぐらしのアリエッティ」

絵はきれいだし、美術、ディテールは申し分ない。
ストーリーも、箇条書きにして出せば悪くないと思う。

と、ここまではテレビで見た「サマーウォーズ」と同じ感想。そして、「サマーウォーズ」ほどではないが、似たようないらだちを感じた。

なんで、このキャラクター、設定、美しさが生かせないんだろう?

舞台をイギリスから日本に移したことに、見る前は批判的だったんだけど、(日本にするなら『木かげの家の小人たち』でいいじゃない!)見てみたら、そこはまあいいかなと思えた。昔の家の床下の感じ、植木鉢が入れてあったり、さらさらした土があったりする感じが、思い出と共によみがえってきて、実感としてのリアリティを感じたから。このイメージ喚起効果は作品として重要だと思う。(今の子供がどれほど床下をイメージできるかはともかくとして)
釘や、建築用(?)ホチキスのはしご段は、「床下や壁板の奥にいつの間にか釘が並んでたりしたら、それは小人たちの仕業かも知れないな」なんて空想がうかんだりして楽しかった。ポットから注がれるお茶の粘りなど、小さな世界の描写の細かさにもうならされた。

問題は、キャラクターと脚本の細かい詰めと一貫性よね。
アリエッティが翔に最初に目撃されるとき、あまりにうかつすぎない? 目撃されるのはいいとして、もう少し、スカートの裾が見えるだけとかにしておいた方がいいのに、と思ったけれど、そこはまあいいとした。
だけど、夜、ティッシュを取りに来て目撃されるところ。あれは、お父さんが先に安全を確認したんだよね。アリエッティが立っていたところには直前までお父さんがいたんだよね。なら、目撃されたのはお父さんの注意不足じゃない? 目撃されたことはいいとして(そうじゃなくては話が進まない)、父親にその自覚が全くないことが不思議だった。まるきりアリエッティ一人のせいになっている。あれでよくこれまで目撃されてこなかったね。

翔がいきなり床板を引っぺがしたのもびっくりした。てっきりハルさんが破壊に来たのかと思ったのに。あれだって、手術から無事に帰ってこられるかどうかわからない、生きているうちに何かしてあげたい、という焦りの描写があれば、もう少し受け入れやすくなると思うんだけど。

何よりもハルさんがあれほど小人を敵視する動機がわからない。最近来たばかりのぼっちゃん(翔)にはさほど思い入れがないにしても、奥様が小人に会いたがっているのはわかっているんだよね。奥様の気持ちは完全無視ですか。でも、雇い主の意向に背いている割りには、堂々と敵視発言をしているし、奥様も別にそれをとがめたり止めたりしていない。
それから、ねずみ取り業者にあそこで帰ってもらうのも変じゃない? 実在は確かめられたのだから、それこそ今こそ全面捜索になりそうなもの。

その他もろもろ、見ていて、「変だ」と感じた箇所は多々あり、しかも、ちょっとだけ変えればそれなりに解決できそうな矛盾だったりして、余計に歯がゆさを感じた。
なんか、全体的に「残念」な映画だと思う。

(「サマーウォーズ」は、歯がゆさどころか、途中から怒り心頭でしたが。夫は「久しぶりに面白いアニメを見た」と喜んでいて、「正気か?」と言いたかった)