「ハムレット(井上芳雄主演)」

まずは、チェコミュージカルの翻訳、栗山民也演出版。
見終わった時に「いままで見たハムレットで一番よかった!」と思った。
これまで蜷川幸雄演出のを2つ見ていた。市村正親版と藤原竜也版。
結局私はハムレットの性格が嫌いで、「自分が悩んでいるからって人を傷つけていいことにはならない。この甘ったれが!!」となってしまう。すべてがハムレットの妄想という解釈でもないかぎり、父王が殺されたのは事実で、ハムレットが苦しみ復讐に燃える十分な理由があることになる、のは分かっているのだけれど、どうしてもクローディアス・ガートルートよりもハムレットの方に怒りを感じてしまっていたのだ。
それが、この1時間40分ほどに短縮したミュージカルでは、同情よりもいらだちを感じさせてしまう「ぐだぐだ」がすっきり整理されて、ハムレットの悩み、苦しみ、怒り、そして狂気が真っ直ぐに伝わってきた。オフィーリアの狂気も合わせて、このミュージカルの狂気と疾走感は、いっそ心地よかった。
ハムレット王子個人の物語としては、一種の完成版ではないかと思う。