『恋する物語のホモセクシュアリティ』

源氏物語』以降の王朝物語は、源氏の模倣、あるいは時代の退廃などを言われることが多かった。
しかし、性:男女のとりかえや、同性愛を扱うのは当時の社会を反映しているからではないのか。
摂関政治では、娘が天皇の子を産むことが重要だった。その体制の中では、(権力を)生む性≠産む性と生まない性が分けられており、召人は現実には子を産む可能性があり、出産もしたにもかかわらず生まない性と位置づけられていた。つまり、召人の産んだ子が権力を得ることも、召人が主人との性関係によって階級を乗り越えることもなかった。
しかし、摂関体制が崩れてくると、召人も生む性となることがあり、それはまた、同性愛もまた生む性となる可能性を示す。
そういった社会背景が、『とりかえばや』という男女た入れ替わる物語を生み、『我が身にたどる姫君』という女帝誕生の物語を生んだ。
フェミニズムでは、セックス(身体的な性)に先立ってジェンダーがある、という考えもあるのだそうだ。