『弥勒の来た道』

弥勒の来た道 (NHKブックス)

弥勒の来た道 (NHKブックス)

弥勒如来であり、菩薩であり、56億7千万年後にやってくるメシアであり、さまざまな顔を持つ弥勒
始めに現れる弥勒は、釈迦の後、同じ道をたどって成仏することが約束されている仏としてである。
弥勒兜率天でで人間の世に下りるのを待っていて、釈迦入滅後56億7千万年後にこの世に下りてきて説法を行い、釈迦の救いから漏れた人々をことごとく救う。(弥勒下生信仰)
しかし、56億7千万年はあまりに遠い。決して来ないときとも言える。だから、死者はすぐに兜率天へのぼり、そこで弥勒と共に56億7千万年待ち、やがて弥勒と共にこの世に戻ってくる、という考えが生まれた。(弥勒上生信仰)
やがて、中国で、自分ではなく先に死んだ身近なもの、祖先などが弥勒の元に行けるようにという一種の先祖供養の形としての弥勒信仰が生まれた。これは阿弥陀信仰の影響を受けたものだろうという。
朝鮮では、新羅で「花郎徒」という青年団の精神修養のよりどころとして信仰された。その時に、半跏思惟像の弥勒が信仰されたのでは?という。そして、中国、朝鮮共に、弥勒の生まれ変わり、化身、と呼ばれる、あるいは自称する人物が現れ歴史を動かすことがあった。(例 則天武后百済では、弥勒世界を再現する大伽藍が作られた。
指を、ほお、あるいは耳の側に当てる形は、観相やヨガの形ではないかという。
やがて半跏思惟の弥勒像が造られなくなるのは、経典にこの形の根拠がないことがわかってきたからだろうという。

その他のメモ

ドイツの哲学者ヤスパースは、ソクラテス孔子、釈迦、イエスの存在した時代を「枢軸の時代」と名付けて人間の精神史が大きく変わったと考えた。しかし、著者は、個というものを考え尽くした前3者と、死後の魂を問題にしたイエスとの間には、またひとつ断絶があるのではと考える。
アレクサンドロスの東征により、東西の文化、宗教が出会った。ゾロアスター教のミスラ、インドの『リグ・ヴェーダ』のミトラ、そしてもしかしたらローマのミトラ(ス)神までもが何らかの関わりを持ち、それが弥勒にもつながっているかもしれないという。
弥勒マイトレーヤ)は、ミトラ神が原始キリスト教に影響を与え、ガンダーラで仏像が作られた時代に、ミトラとの同一視を経て、メシア思想を備えた、天から下りてくる仏に作り替えられたのではないか、(という。紀元1,2世紀)
胎蔵界曼荼羅は、入門儀式のため地面に砂でかかれ、儀式の終わりまでには消えてしまうものの。
金剛界曼荼羅は、仏の1人1人をイメージする修行のためのもの。
仏像はガンダーラと同時期にマトゥーラでも作られた。こちらは東洋的なお顔。